🧬 はじめに ― 遺伝子検査の重要性と進化現代の検査現場において、遺伝子検査は欠かせないツールとなっています。食中毒菌の検出や遺伝子組み換え食品検査、さらには医療分野まで、さまざまな場面でその力が発揮されています。その中心的存在が、PCR法。高い感度と特異性を兼ね備え、「遺伝子検査のスタンダード」として長らく利用されてきました。しかし、すべての場面においてPCR法が最適とは限りません。近年、新たな選択肢として注目されているのが ― LAMP法です。目次◆ 注目される「LAMP法」とは?LAMP法(Loop-mediated Isothermal Amplification)は、PCRとは異なる“等温核酸増幅法”の一種です。特徴は、一定の温度(60~65℃)で核酸増幅ができるという点です。つまり、複雑な温度制御を必要とせず、より簡便かつ迅速に検査が可能になります。🔬 LAMP法とは?等温増幅の基本原理をやさしく解説◆ PCRとの違いは「温度」にあり!LAMP法は、一定の温度でDNAを増幅できる「等温増幅法」の一種です。これまで主流だったPCR法では、高温でDNAを変性低温でプライマーをアニーリング中温でDNAを伸長という温度の上げ下げを繰り返すサイクルが必要でしたが、LAMP法ではこの温度変化が不要。60~65℃という一定の温度だけで反応が完了するのが最大の特長です。◆ 鍵を握る「プライマー」と「ループ構造」LAMP法で活躍するのは、以下のような要素です。🧪 鎖置換型DNAポリメラーゼ🧬 4〜6本の特殊なプライマーセットこのプライマーは、標的DNAの6~8ヵ所ほどを認識して、以下のように増幅を進めます。内側のプライマーがDNAに結合し、伸長開始外側のプライマーがその後に結合し、DNAの合成が進行生成されたDNAがループ構造を形成し、連鎖的に増幅このループが増幅の「起点」となり、高速かつ効率的な増幅反応が実現します。◆ 特異性が高く、偽陽性リスクを抑えるLAMP法のもう一つの強みは、高い特異性です。複数のプライマーがそれぞれ異なる部位に結合しなければ増幅が起こりにくいことが挙げられます。✅ LAMP法のメリットとは?検査現場で選ばれる理由◆ 圧倒的なスピード感 ― わずか30分で結果が出るLAMP法最大のメリットの一つが「迅速性」です。⏱ 一般的に 30分〜1時間以内に結果判定が可能⏳ PCR法は1〜3時間かかることもあり、大幅な時間短縮に緊急性の高い感染症の検査や、大量のサンプル処理が必要な場合に特に有効です。◆ シンプルな機器でOK ― 現場の負担を軽減LAMP法は等温反応のため、サーマルサイクラーのような高価な装置が不要です。必要なものは…以下のいずれか🔥 恒温槽💧 ウォーターバス🛡️LAMP検出装置(検出のほか、等温反応も行える装置が主流です)つまり、初期投資が抑えられ、現場導入のハードルが低いのが特徴です。◆ コスト面でも優秀 ― スクリーニングにも最適LAMP装置がPCR装置に比べると比較的安価試薬も比較的安価(※製品による)これにより、大規模なスクリーニング検査などに活用しやすく、コストパフォーマンスに優れた手法として注目されています。◆ 検出がカンタン ― 白濁や色の変化で目視確認も可能LAMP法では、増幅が起きると反応液が白く濁る(ピロリン酸マグネシウムの生成)ため、👀 肉眼でも検出が可能!さらに…🔬 インターカレーター(二本鎖DNA結合性蛍光色素)と耐熱性ピロホスファターゼの反応原理を活用したLAMP法用蛍光検出装置 FLight Scannerも販売されています。蛍光の強度によって陽性・陰性を判定する方法が用いられ、検出方法も進化しています。→ 専用装置がコンパクトで、結果をすぐに判定できるため、POCTにも最適です。→ 本製品はコンセント接続が必要な仕様となっております。ポータブル(持ち運び)対応は現時点でしておりませんので、あらかじめご了承ください。LAMP法用の蛍光検出装置「FLight Scanner」は、コラボナレッジでも取り扱っております。「詳しい説明を聞きたい」「デモ機を試してみたい」「まずは見積もりが欲しい」など、ご興味のある方は お気軽に当社のお問い合わせフォーム よりご連絡ください。▶︎お問い合わせフォームはこちら◆ 感度も高い ― 微量な遺伝子も逃さないLAMP法は高い増幅効率を誇り、🧬 微量なウイルスや細菌も短時間で検出可能感染初期など、病原体量が少ない段階でも診断の助けになります。【この章のまとめ】✅ 30〜60分で検査結果が得られる✅ 高価な機器不要で、導入しやすい✅ コストを抑えて多検体処理に対応✅ 色の変化で検出でき、現場でも活躍✅ POCTや低リソース環境でも活用可能⚠️ LAMP法の注意点と限界 ― 導入前に知っておくべきことLAMP法には多くのメリットがある一方で、すべてのシーンで万能というわけではありません。導入や活用に際して、以下のような注意点と限界があります。① 感度は「PCRと同等」も、状況により劣ることもLAMP法の感度は、🔬 一般的にはPCR法と同等 または🔍 わずかに劣るとされる場合があります。高感度に最適化されたPCRアッセイと比較すると、微量ウイルスや病原体の検出力に違いが出ることも。🧭 検査の目的に応じて、手法を使い分けることが大切です。② プライマー設計が複雑LAMP法では、標的DNAの複数領域に対応した 4〜6本の特殊なプライマー設計が必要です。専用の設計ソフトLAMP法に特化したプライマー設計ツールとして、栄研化学社から公開されている「PrimerExplorer」が広く利用されています。プライマー設計の知識と経験ニッポン・ジーン社ではLAMPプライマーの設計を受託しているため、外注対応も可能です。自社での設計が難しい場合は、専門機関への依頼も選択肢となります。→ PCRに比べて、設計のハードルが高いのが課題です。③ 偽陽性リスクとコンタミネーションに注意LAMP法は非常に高感度な反面、⚠️ わずかな汚染(コンタミネーション)でも増幅が起こる 🧪 作業手順に十分に注意をはらわないと非特異的反応の可能性が高くなります。そのため…🛡️ 厳格なプロトコルと品質管理体制の確立が不可欠です!LAMP法では、試薬の調製と反応操作は、それぞれ独立した作業環境で行うことが理想と考えています。しかし、別室の確保が難しい場合には、クリーンベンチ内での試薬調製など、交差汚染を防ぐための対策を講じることが重要です。④ 定量検査には不向きなケースが多い通常のLAMP法は、✅ 陽性 or 陰性の定性的な判定qPCRのように、📊 遺伝子量をリアルタイムで測定する定量性は低い(難しい)👉 定量データが必要な場合には、リアルタイムPCRなどの他手法の併用が必要と考えられます。⑤ マルチプレックス化には課題ありLAMP法では、1つのターゲット遺伝子に対して複数のプライマーを必要とするため、複数遺伝子を同時に検出する「マルチプレックス化」には設計上の工夫が求められます。これは、プライマー同士の相互干渉のリスクが高まりやすくなるためです。私の経験上では、PCR法でも項目数が増えるとマルチプレックス化の難易度は上がりますが、2~3項目程度であれば比較的容易に設計可能と考えています。一方、LAMP法では、単項目での高感度・高特異性の強みがある反面、複数項目を一度に検出するには慎重な最適化が必要であり、現時点ではPCR法よりも設計・運用の難易度が高いのが現状です。🔍 PCR法との比較:検査担当者が知っておくべきポイントLAMP法とPCR法は、いずれも遺伝子の増幅技術に基づく検査法ですが、その原理や使用機器、得られる情報には明確な違いがあります。検査担当者がそれぞれの特徴を正しく理解することは、検査目的に応じた手法の選択と、精度の高い診断につながります。🧪 LAMP法とPCR法の比較表項目LAMP法PCR法増幅原理等温増幅(一定温度)温度サイクルによる増幅(変性・アニーリング・伸長)温度条件一定温度(60~65℃)温度変化が必要 ※ 装置の構造が複雑になる使用機器恒温槽、LAMP法検出装置サーマルサイクラー反応時間短い(30分〜1時間程度)長い(1〜3時間程度)感度高いが、PCRにわずかに劣る場合あり高い特異性高い(複数プライマー)高い(リアルタイムPCR法|プローブ・プライマー)劣る(コンベンショナルPCR法)定量性通常は定性的(陽性/陰性)定量的測定も可能(リアルタイムPCR)プライマー設計複雑(4〜6本のプライマー)比較的容易コスト機器次第で低コスト導入コストが高い検出方法白濁、蛍光検出など蛍光検出、電気泳動など用途例迅速診断、POCT基礎研究、臨床診断、定量分析などマルチプレックス化難しい比較的容易◆ どちらを選ぶ?目的に応じた使い分けを🔹 PCR法は、長年にわたり標準手法として確立されており、微量な遺伝子の高感度・高精度な定量検出に適しています。基礎研究や詳細な解析が必要な臨床検査に向いています。🔹 一方、LAMP法は、迅速性・簡便性・低コストが求められる場面で力を発揮します。設備の限られた現場に向いています。このように、LAMP法とPCR法は相互補完的に使われるべきものであり、目的や現場の状況に応じて最適な手法を選ぶことが求められます。🦠 LAMP法の応用事例:感染症検査の最前線で活躍LAMP法はその迅速性・簡便性・コスト効率を活かし、特に感染症の診断分野で広く実用化が進んでいます。💡「発見を早く」「拡大を防ぐ」ための切り札として、現場での存在感を高めています。◆ 新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック下において、LAMP法は新型コロナウイルスの迅速検出手法として注目されました。⏱ 短時間での結果判定が可能🧰 簡便な機器での検査運用🛫 空港やイベント会場などでのスクリーニング検査にも活用→ PCR法の補完として、現場の検査体制の拡充に貢献しました。◆ インフルエンザなどのウイルス感染症インフルエンザウイルスの早期診断により、迅速な治療開始が可能に。◆ 食中毒・環境対策・ジビエの現場でも🍖 サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌(O157)などの検出に利用→ 従来の培養法に比べ、検査時間を大幅に短縮💧 レジオネラ菌の検出にもLAMP法が使われ、早期対応が可能に。・🍖野生鳥獣の食肉処理施設あるいは二次加工を行う施設において、警戒すべき食中毒菌として、サルモネラ属菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌などが挙げられます。LAMP法での検出試薬も販売されています。◆ その他の病原体でも実績あり以下のような幅広い病原体の診断にLAMP法が応用されていますノロウイルスマイコプラズマB型肝炎ウイルス→ このように、LAMP法は高い汎用性を備えた検出手法として活用されています。🧪 LAMP法の基本的な検査手順と品質管理のポイントLAMP法は、比較的シンプルなプロセスで実施できることが大きな利点です。ただし、高感度な手法であるがゆえに、検査手順の遵守と品質管理の徹底が重要です。◆ 一般的な検査フロー(5ステップ)検体採取と前処理 対象に応じて、鼻咽頭ぬぐい液・唾液・血液・食品などから適切に採取します。 必要に応じて、濾過や希釈などの前処理を行います。核酸抽出 対象となるDNAまたはRNAを抽出します。 キットによっては、簡易抽出法や抽出不要(ダイレクト法)に対応しているものもあります。反応試薬の準備 必要な試薬(プライマー、酵素、基質、緩衝液など)を混合。 市販のLAMPキットでは、これらがあらかじめ調製されており、そのまま使用可能です。反応・増幅 抽出した核酸と試薬を混合し、60~65℃で30〜60分間インキュベートします。検出と判定 増幅の有無を白濁・蛍光などで確認。 (陽性・陰性コントロールとの比較や蛍光強度の値により、結果を判定します。)◆ 品質管理の重要性 ― 高感度ゆえの注意点LAMP法は非常に高感度であるため、微量な汚染でも偽陽性が発生する恐れがあります。🔒 コンタミネーション対策としての基本ルール:試薬調製、検体操作、反応後処理はゾーニングされた作業スペースで行う毎回、陽性・陰性コントロールをセットで実施するのがベター製品の添付文書に沿った手順遵守(反応条件・操作時間など)また、検査担当者は…🎓 LAMP法の原理と操作手順のトレーニングを受けておくことが重要です。不適切な操作は、結果の信頼性に直結します。日本におけるLAMP法の位置づけと今後の展望◆ 信頼性 ― 承認・保険適用が進む日本国内において、LAMP法はすでに医療・食品衛生の現場で実用化が進んでいます。✅ 体外診断用医薬品として承認されたLAMP検査キットが存在✅ 食品衛生分野でも、腸管出血性大腸菌O157などの迅速検査にLAMP法が導入✅ 植物病理分野でも、公的機関で植物病原菌などの検査にLAMP法が導入すでに日本の検査インフラに組み込まれつつある、信頼性の高い手法です。◆ 今後の展望 ― 多様化する検査ニーズへの対応力LAMP法の今後には、次のような可能性があると考えています。🔹 感染症のパンデミックやアウトブレイクへの即応検査体制がひっ迫する中でも、簡便かつ迅速な導入が可能限られた経営資源でも対応できる柔軟性🔹 地域・在宅医療での活用医療機関が少ない地域や、在宅医療/自己検査での展開に期待モバイル検査機器として、検査の民主化が進む🔹 技術革新による進化高感度化・高特異性化された新しいLAMPアッセイの開発マルチプレックス化技術の進展により、複数の病原体を同時に検出可能に定量検査への応用による、より高度な臨床診断への対応◆ LAMP法 × PCR法 ― 補完関係で活きる未来LAMP法は、PCR法の「代替」ではなく、⚖️ 「相互補完的」な検査手法として、状況に応じて柔軟に使い分けるべき存在です。たとえば:🧫 精密検査や定量が必要な場面 → PCR法🏥 迅速な現場検査やスクリーニング → LAMP法LAMP法は「より速く、より身近な検査の実現」に向けた重要な鍵となるでしょう。🔍 PCR法と比較したLAMP法の強み🕒 短時間で検査が完了(30〜60分)🔧 高価な機器が不要(恒温槽などでOK)👀 白濁や色変化などで、目視検出も可能⚠ 注意すべき点も🎯 感度や定量性では、用途によりPCRに軍配が上がることも🧬 プライマー設計が複雑で、専門知識が必要🛡 コンタミネーション対策を徹底した品質管理が求められる📈 感染症検査から在宅医療まで、活用の幅は広がっているLAMP法はすでに、新型コロナやインフルエンザの検出サルモネラ菌やO157などの食品検査植物のウイルス病などの植物病原菌検査など、多くの現場で使われており、今後は在宅医療や様々な分野にも活躍の場が広がると期待されています。📈 LAMP法用蛍光検出装置 FLight ScannerLAMP法用の蛍光検出装置FLight Scannerは、インターカレーター法による等温遺伝子増幅検出用の装置です。LAMP法用の蛍光検出装置「FLight Scanner」は、コラボナレッジでも取り扱っております。「詳しい説明を聞きたい」「デモ機を試してみたい」「まずは見積もりが欲しい」など、ご興味のある方は お気軽に当社のお問い合わせフォーム よりご連絡ください。▶︎お問い合わせフォームはこちら商品仕様商品名商品コード容量税抜価格FLight Scanner391-65101台760,000円製造販売元: 株式会社ニッポンジーン特徴○軽量1kg、コンパクト〇分かりやすいタッチパネル画面〇わずか数十分で遺伝子検出可能